動画タイトル:【日本メディアの“福音派”誤解】イラン攻撃は宗教戦争ではない/宗教のグラデーションでアメリカを読む/宗教道具化で延命するトランプ/米イスラエルの同床異夢とは?
- 出演者:宗教学者・立教大学教授の加藤喜之さん(聞き手:作家の広野真嗣さん)
- 主なテーマ:アメリカの福音派(エヴァンジェリカル)と中東政策(特にイラン攻撃)をめぐる日本メディアの誤解を解く内容。
動画のポイントまとめ(全体の主旨)
- 日本メディアの「福音派」報道の誤解
日本ではイラン攻撃やイスラエル支援を「福音派の宗教的動機(終末論・聖書預言実現)」だけで説明しがちですが、実際はもっと複雑。宗教がすべてを駆動しているわけではなく、政治・戦略・国内事情が絡み合っていると指摘。 - イラン攻撃は「宗教戦争」ではない
福音派の一部はイスラエルを聖書的に重要視しますが、今回のイランへの先制攻撃は福音派が traditionally 許容する「正義の戦争(just war)」の条件を満たさないという分析も。米世論調査でも白人福音派の支持は高いものの、単純な宗教戦争枠組みでは説明しきれない。 - アメリカを「宗教のグラデーション」で読む
アメリカ社会の宗教は白黒ではなく、グラデーション(濃淡)で考えるべき。福音派も一枚岩ではなく、多様な立場が存在。メディアが「福音派=終末論狂信者」と単純化しすぎている点を批判。 - トランプの「宗教道具化」
トランプは福音派の支持を維持・拡大するために宗教を政治的に利用(道具化)しており、それで政権や影響力を延命させている側面がある。 - 米イスラエルの「同床異夢」
アメリカとイスラエルは同盟関係だが、目的や利益が必ずしも一致していない(同床異夢)。イスラエル側の戦略と、アメリカ国内の政治・宗教勢力の思惑が絡み合う複雑な構造を解説。
全体のトーン宗教学者の加藤さんが、宗教と地政学の観点から冷静に分析。
日本メディアの報道が「宗教色」を強調しすぎて本質を見誤っている可能性を指摘し、より多角的な視点(宗教+政治+戦略)を促す内容です。
■概 要
米イスラエルのイラン攻撃の「黒幕」が福音派であるかのような言説が日本で広まっています。福音派は実際にはどの程度の影響力を有しているのか。そしてトランプ政権は、宗教をどのように情報戦に利用してきたのか。立教大学教授で宗教学者の加藤喜之さんに、ノンフィクション作家の広野真嗣さんが聞きました。4月28日発売号のニューズウィーク日本版「宗教入門」特集との連動企画です。

■目 次
00:00 動画ダイジェスト
01:12 イラン攻撃は福音派が後押しした?
04:54 “宗教オールスター”集合の理由
08:39 ヘグセス国防長官の果たした役割
11:23 そもそも福音派とは
12:46 宗教を使った情報戦
14:17 戦争苦戦でも福音派は冷めていない
17:32 トランプ神聖化の構図
19:52 日本メディアの誤解
22:43 バンス副大統領を動かす論理
25:35 福音派以外の動向
30:15 米イスラエルの同床異夢
38:54 中間選挙はどうなる?
■出 演
▼加藤喜之(立教大学文学部教授、宗教学者)
1979年、愛知県生まれ。2013年プリンストン神学大学院博士課程修了(Ph.D取得)。東京基督教大学准教授、ケンブリッジ大学やロンドン・スクール・オブ・エコノミクスでの客員フェローなどを経て現職。専門は思想史、宗教学。昨年発表した著書『福音派―終末論に引き裂かれるアメリカ社会 』が話題になった。
▼広野真嗣(ノンフィクション作家)
1975年、東京生まれ。神戸新聞記者、猪瀬直樹事務所を経てフリーに。著書に『消された信仰』(小学館ノンフィクション大賞受賞)、『奔流 コロナ「専門家」はなぜ消されたのか』(科学ジャーナリズム大賞2025優秀賞受賞)など。ニューズウィーク日本版では参政党ルポなどを執筆。
このインタビューは、感情的な宗教戦争論ではなく、冷静で多角的な分析を促す内容です。
文字起こしにChatGPT5.5も使用しましたが、最終的にGROKを使用しました。
一部不明瞭な部分(音声認識誤り)もありましたが、全体約42分のインタビューの流れは上記の通りです。
0:00
戦争決定のプロセスにはおそらく福音派は多分絡んでないと見ていいんじゃないかなと思います。メディアだとイランのシーア派と、キリスト教福音派とユダヤ教徒もこの三つ巴の戦争だみたいな、それはきっと誤解で、日本の言動を見てるとキリスト教がおかしいんだみたいな言動も出てきてるけど、とんでもない間違いで、かなり単純化した切り取りをしがちですよね。
0:23
うん。ただ、そのね、動画を見てみると、戦争を正当化するツールとしては宗教がかなり使われているような気がするんですよね。こういった状況を憂えている福音派もいて、戦争も反対だし、こういう形でイスラエルに引きずられるのもおかしいっていう人たちもいる。
0:41
宗教的情熱を経済の状況が冷ましたみたいな状況にはなっているのか、この辺りどうですか。
0:47
なってないと思いますね。ま、ほぼほぼトランプを神聖化するようなナラティブもあるわけですよ。
0:53
あの、イスラエルのそのシオニズムみたいなものと、アメリカで言われてるシオニズムっていうのは全く一緒じゃないし、むしろ。
1:01
同意務みたいなところがないのかな。本来はね。おっしゃる通り同床異夢で、目指す方向は違うんだけども。
1:07
つまり、こんにちは。ノンフィクション作家の広野真嗣です。
チャプター 2: イラン攻撃は福音派が後押しした?
1:15
今日は、米福音派とイラン戦争というふうに題しまして、立教大学教授で宗教学者の加藤喜之先生においでいただきまして、お話を伺っていきたいと思います。停戦に至ったということではありますけれども、
1:29
え、今後このイラン戦争を巡ってですね、米福音派の間でどんな力学が働いてるのかという辺りを中心にお話を伺ってまいりたいと思います。加藤先生、よろしくお願いします。よろしくお願いします。で、まず
1:43
早速なんですが、あの、4月8日に、アメリカとイランのですね、停戦合意が報道されて、ま、電撃的な形にも聞こえては来たんですけれども、そもそもその戦争の始まりからですね、かなりその
1:59
先生のご専門でもある、アメリカ国内の、プロテスタント福音派の影響があって戦争が始まったというようなこともかなり報道されました。
2:06
ま、この間その停戦に至ったにあたって、ま、この福音派の影響とどういうふうにあるのか、もう含めてちょっとこの今回の停戦どういうふうにこれになってるか
2:17
うん。ま、最初は本当に、ま、よくわかってなくて、ま、実際どういう経緯で始まったのか、ま、最初はルビオさんがあの、イスラエルに引っ張られるような形だったとか、ま、最高司令官がね、なんかヘグセス君がやりたかったんじゃないのかみたいななんかよくわからない感じになってましたけど、
2:34
ま、ようやくなんかここに来て2月11日にそのベンヤミン・ネタニヤフ氏が、あの、トランプの前でプレゼンテーションをして、ま、トランプがオッケーいいんじゃねみたいな感じで簡単なノリでね、
2:45
行って、ま、それに対して、ま、うんも懸念を示したし、ま、バンス反対をして、CIAなんかいや、ちょっとまずいんじゃないかと言いながらも結局
2:54
ゴーサインが出てしまった。で、ゴーサインが出たからには、ま、それに協力するっていう形で閣僚もそれに乗っかっていったというのがなんとなく分かってるので。うん。うん。
3:01
戦争決定のプロセスにはおそらく福音派は多分絡んでないと見ていいんじゃないかなと思います。ま、ただそのじゃあ宗教的な理由がないのかっていうとそういうわけでもなくて、なんかその一方でね、メディアだとそのもうこれは宗教戦争だみたいな、イランのシーア派と、キリスト教福音派と、さらにはユダヤのユダヤ教徒もこの三つ巴の戦争団みたいな煽るようなね、その言説が出てますけど、ま、それはきっと誤解で。うん。
3:27
はい。どのような軍事作戦においても当然宗教だけを理由に軍事作戦に突っ込むわけではないので、ま、外交の延長線上の軍事作戦ということを考えると、外交にはとりわけ経済的な理由があり、軍事的な理由があり、さらには価値観の問題で、この価値観の中に多分宗教っていうのが入ってくるわけですよね。なので、今回のことも、決定には確かに宗教っていうのはおそらくそんな影響は及ぼしてない。ただ、ま、その後のね。
3:57
はい。いろんなものを見てみると、ま、かなり頻繁に宗教的な伝説とかシンボルっていうのが引用されて使われて、ま、それによって軍人を鼓舞したり鼓舞したりだったりとか、ま、それ一般に
4:11
語りかけたりはしているので、ま、そういう意味ではその戦争を正当化するツールとしては宗教がかなり使われているような気がするんですよね。なるほど。
4:19
うん。ま、実際あのホワイトハウスの執務室でトランプを中心にその周りを宗教指導者が手をかざす形で祈ったりとかですね。
4:32
[笑い]
4:33
ええ、当てはまっていましたけれども、ああいうものも、まさに戦争のツールですし、ま、ヘグセスが軍の関係者に対して宗教的なナラティブを使ってですね、彼らに指示を出してたみたいな形のあの辺っていうのは、こう先生の目線からご覧になってどういうふうに映ってたんですか?
4:52
うん。そうですね。その、ホワイトハウス内部での祈りっていうのは非常に興味深い事象だったなと私は思っていて、ま、ああいう形でね、大統領の周りに宗教指導者たちが集まって祈りを捧げるっていうのは第一次政権でもあったので、特段驚くことではないんですけども、ま、あれをなんか
チャプター 3: “宗教オールスター”集合の理由
5:13
SNSに上げてたポーラ・ホワイトケインっていうね、進行局の上級顧問の人は、ま、これがそのオペレーション・エピック・フィーリー、この偉大なる怒りの成功につながりますようにみたいなね、戦争を応援する形での祈りだったっていうのはこれは非常に特筆すべきところだと思いますし、ま、ヘグセスさん、特にペンタゴン国防総省の関係で見てみると彼自身もそうだし、その司令官の何人かが、これはアルマゲドンだとか、これはもうイランをぶった叩くために神が与えてくれたチャンスなんだみたいなキリスト教のナラティブの中で、部下たちに語りかけて、それが当然軍内部は様々な宗教を持ってる人たちがいるので、これはちょっと我々の宗教の自由っていうのを侵害するっていうことで苦情が出てましたよね。
6:09
なので、そういうことで、非常になんかそのキリスト教的、特に保守的なキリスト教、ま、福音派の関係だと思いますけども、そちらの方でナラティブ(物語)が描かれてそれを周りに振りまいているような状態で、
6:18
一番私が関心を持ってみたのは、その金曜日が4月2日だったので、復活祭直前に、ホワイトハウスで行われた祈り会、さらに晩餐会みたいなのがあって、ある福音派のリーダーたちがそこに集っていたんですよね。
ロバート・ジェフレスっていう、2018年に大使館がエルサレムに移った時に祈りを捧げた3人の聖職者のうちの1人も集っていたし、あのフランクリン・グラハムっていうね、ビリー・グラハムの息子で、
フランクリン・グラハム
トランプの24年の選挙の時に場所についてて、特にその24年7月にペンシルベニアのバトラーでトランプが暗殺未遂にあった時、それ以降必ずと言っていいほどフランクリンはこれは神の働きだったみたいな形でトランプを神聖化しているような1人で、もう1人はもちろんポーラ氏もいましたし、ラルフ・リードっていうね、長年30年以上キリスト教のロビイスト団体を率いていて、近年では信仰と自由連合というトランプを大統領に押し上げたようなロビ団体を率いた人たち、早々たる福音派のリーダーたちがそこに集って祈りを捧げて、アルマゲドンっていう言葉は出なかったけれども、この戦争を明確に善と悪の戦いみたいな形でね、さらにはそのフランクリン・グラハムなんかはエステル記っていう旧約聖書を引きながら、ま、エステル記っていうのはユダヤ人がペルシャ(イラン)にいるユダヤ人たちが虐殺されそうになる話ですよ。
そう、まさにイランということで、それを引きながら、今もまたペルシャはユダヤ人を殺そうとしてる。それを守るために、このような時のために神はトランプあなたを立ててくださったんだみたいなね、そういう摂理とか神の導きとかっていうことで、そういう言説とかシンボルを展開しながら、この戦争を正当化していったっていう経緯があるので、停戦には至りましたけども、そういう宗教言語っていうのは、非常に今回の戦争では正当化のために多分使われてるんじゃないかなと思います。
8:38
うん。なるほど。実際はヘグセスのその登場頻度ってのが、日本のメディアでもこの戦争は特に多かったなというふうに感じるんですけれども、え、インドから帰ってくるイランの軍艦をミサイルで攻撃して沈没させた瞬間にかなり興奮をしたような状態で会見をしたりだとか、あと後半になるとその、
チャプター 4: ヘグセス国防長官の果たした役割
8:59
えっと、将軍を3人ですかね、介入したりとかって、ま、かなりその彼の振る舞いによって軍の中に混乱というか、今までになかったようなことがあったようにも見えるんですけれども、あの辺というのはやっぱりその彼の宗教的な情熱全開としたようなところが影響してるんですか。
9:17
おそらくかなりその価値観としては、もちろん福音派的な、改革派の影響は受けていて、その背後にはダグ・ウィルソンっていう非常に最近ではCNNとかでもインタビューされたりする保守的な改革派の牧師がいますけども、そういう人たちの影響当然あるとは思うんですよね。
9:45
ま、そういった中で彼は非常に反リベラル、反多様性っていうのを、これはどの閣僚もやってることですけども、とりわけ軍隊内部でやっていて、今の将軍はほぼほぼ全員、白人男性なんですよね。
10:00
うん。なるほど。で、女性が昇進できない問題とか、多様な人種、国籍の人が将軍になれないとか、今回更迭になった将校もそのチャプレン長の方なんですよね。で、そのチャプレン長っていうのは当然アメリカの中には様々な従軍牧師がいて、これは別にキリスト教に限らず、ユダヤ教であったり、ムスリムもいるわけですよ。
陸軍のチャプレン(U.S. Army Chaplain)とは、アメリカ陸軍(および米軍全体)で活動する従軍聖職者(military chaplain)**のことです。簡単に言うと、軍隊に所属する「軍人資格を持つ宗教指導者」で、兵士やその家族の精神的なケア、宗教的な支援、士気向上、道徳的な助言を専門とする役割を担っています。
10:29
はい。それがアメリカの多様性の象徴ではあったわけです。そう。当然それはもうそのシステム内にはいろんな優秀なアメリカ人が能力によって採用されているので宗教的な背景は色々あるわけですけども、そういうことを良しとは思わない多分その方針っていうのがあって、そういう方向で今回の将校の更迭にもつながってるのかもしれないですね。
10:55
ま、なんかその辺りはヘグセスさん自身の価値観と、軍内部での作戦の遂行のためにもしかしたら地上軍を送りたいのにそれに反対してるとか、その辺はちょっとまだ見えてきてないですけども、なので必ずしも宗教的な背景だけではないかもしれないけども、少なくともそういう言説とか行動を見てると、それを強く牽引してるヘグセスさんの姿っていうのが見えてくるかなと思いますよ。
チャプター 10: バンス副大統領を動かす論理
22:43
いや、その意味で先ほどちょっと言及があった、あのバンスの動きっていうのが非常に興味深いなと思っていて、バンスは今お話に出てる福音派ではなくて、保守的なカトリックなんですよ。
22:56
彼が実は4月7日のニューヨーク・タイムズでも、かなり強硬に反対をして、「やるんであれば一気に叩いてさっと逃げる」という形がいいんじゃないかみたいなことを言ったってこともありますよね。
23:09
教皇レオ14世が「武器を置きなさい」と言ったことと、その後その中でバンスが役割を果たしたということがどうしても後に来るので、
23:22
そういう教皇の影響でバンスが働きかけた、そういうものが影響を及ぼしたと考えがちですけど、これもやっぱりまた違うのかもしれない。
23:31
違うと思います。私は、もうバンスはね、元々我が本流というか、海外(特にアフガニスタン、イラク)で軍備を増やして疲弊してきたんだから、その結果アメリカの内部の教育とか医療っていうのが全然行き届かない状態になって、そこに本当にお金を投じなきゃいけないということをずっと言い続けてるし、『ヒルビリー・エレジー』なんてまさにそうですよね。絶望してしまったアメリカの民のために、そこに本当はお金も労力も政治力も注ぐべきだということを一貫して言ってきたんですよ。
24:00
なので、今回も「レオ14世教皇の言いなりにバンスはなってるんじゃないか」みたいな、それはすごく分かりやすい宗教的な見え方ですけど、元々は実はバンスとレオ14世(前教皇時代の名前は思い出せませんが)は結構対立してたんですよ。特に移民政策とか、その外主義に思われることで、弱者に対して本当は手を伸ばさなければいけないのに、バンスなんかは「いやいや、それはカトリックの教えで愛の秩序(オールド・オブ・チャリティー)っていうものがあるから、自分たちの家族を大事に、国民を大事に、最後に来るのが移民だ」みたいなことを言ってたんだけど、それを批判されたんですよね。
24:46
「そんなんはカトリックの本当の愛の秩序じゃないよ」ということを、前教皇時代にX上で批判されたりして、今のレオ14世は今回の復活祭のメッセージでもわかりますけども、非常に普遍的で、決して一国主義になびくような教皇ではないわけですよね。
25:20
で、バンスはやっぱり愛国者でアメリカ・ファーストなので当然そこではずれが生じていたし、たまたま今回「暴力を置きなさい」ということが一致しただけで、教皇が行ったからとか、バンスがもしかしたら破門されるからそれを恐れてとか、全然そういうことではない。元々のバンスの考えから全くそれていないので、その通りだと思いますけどね。
25:33
うん。なるほど。あの、アメリカの宗教地図がどうしてもかなり一色に単色になってるんじゃないかっていうイメージを私自身持ちがちですけど、そういう意味では、カトリックのバンスもいて、福音派もいる、さらに言えば福音派も含めてプロテスタントもたくさんあるということですよね。
チャプター 11: 福音派以外の動向
25:50
あの、こないだ報道にあったグラフをちょっと今手元で見てるんですけれども、アメリカのプロテスタントの中で、福音派のプロテスタントが23%で、その次に多いのがカトリック19%っていうんですかね。あと色々あるわけですけれども、無宗教が29%。
26:12
この辺りっていうのは、福音派の影響っていうのはかなりよく言われるんですけど、他の宗派あるいは宗教の影響ってのは今はほとんどないのか、あるいは報じられてないだけなのか、その辺りどうなんでしょう。
26:27
はい。社会において宗教の影響を考えるとカトリックはすごく影響を持っていて、とりわけ保守的なカトリックはすごく影響を持っています。バンスなんかはそれに所属してるし、今回の4月1日のホワイトハウスの祈りの時にもロバート・バロンね、保守的な司教がそこに招かれていたんですけれども、彼なんかもう徹底した保守主義者ですよね。
26:51
なのでカトリック内部も、リベラル派と保守派っていうのが分かれていて、前教皇フランシスコ一世とか現教皇レオ14世とかはどちらかというとリベラルで、それに対する保守的な司教っていうのは結構いて、もっと一国主義的なナショナリズムを望むような人たちもいる。
27:16
さらに言うと、カトリック内部では第1期トランプ政権の時に3人の最高裁判事が保守派になりましたけど、1人を除いて2人は明確な保守的なカトリックなんですよね。中絶反対であったり、同性婚反対であったり、ジェンダー問題とかを非常に保守的な方向で取る。
27:36
で、そういう司法戦略で、最高裁判事から連邦裁判事、様々な判事を保守派で固めるという司法団体がいて、これも本の中で少し書いてありますけど、フェデラリスト・ソサエティっていう団体があって、レオナルド・レオっていう法律家がその団体を作って相当なお金を集めて、そのお金をいろんなところに分配して保守的な判事たちを様々な連邦裁判所に送り出してる。
28:05
で、そういうことを通して、司法を通してカトリック(保守派)は保守的な政策っていうのを進めている。その点において保守的なカトリックはすごく影響力を持っているんですよね。
28:16
なんかその実は私たち、今回の戦争で福音派とのつながりがまたクローズアップされたところありますけど、
28:23
今おっしゃったのはいわゆる最高裁の判例を作っていく上で力のあるところでカトリックが影響をしている。
28:31
で、例えばちょっと1年ぐらい前、第2期政権が始まった当初なんかに記憶を戻してみると、一番影響力ありそうだなと思ったのがどっちかっていうとビジネス派のベッセントとかですね、あのラトニックとか、関税をやるにあたって力を発揮した人たちもいました。
28:48
で、しかし先般ニューヨーク・タイムズで報じられた回線決定の席にはあのベッセントやラトニックはいなくて、この辺りはつまり政権内部での権力闘争というか、そういうものが以前に比べて見えなくなってるような感じもするんですけど、その辺はどうなんでしょうか?
29:11
ま、確かにその時々によって出てくる人たちは違いますし、ラトニックなんかはそういうところで目立ってるわけです。彼はそんなに宗教色はないわけですよ。ベッセントさんも社会的にはちょっとリベラルなところもあったりとか、ご自身が確か同性愛者だったりとか、なんかそういうところでいわゆる保守的な人たちと若干ずれはあるし、それほど宗教色っていうのは出していない。
29:45
ま、ただ、中においては結構強い右派だったりっていうのはありますけども、なので、同じ政権の中でも当然より宗教的な方とそうではない方もいるし、宗教的な方においても例えばヘグセスとバンスはカトリックと福音派で違ったりするし、ルビオもカトリックであるけど保守的なカトリックであるけども、バンスともちょっと目線が違ったりとか、その辺のずれっていうのは当然あるとは思うんですよね。
30:13
なるほど。あので、以前から先生にお伺いしたかったんですけど、アメリカの福音派にシオニズムが強調されて今クローズアップされます。これはいわゆるイスラエルに神の王国が建設されることと、聖書の物語を中心にあの組み立てられてるわけですけども、
チャプター 12: 米イスラエルの同床異夢
30:34
イスラエルのシオニズムと言われる分類で考え方を整理されることってありますよね。つまりイスラエル国家を作るという建国の物語があるわけですよね。
30:47
では、イスラエルのその建国の物語とかシオニズムみたいなものと、アメリカで言われてるシオニズムっていうのは一緒じゃないし、むしろ
30:57
はい。ユダヤ人にとって見れば旧約聖書の物語が中心だったりするわけですよね。彼らの間が今こう一緒にやってるように見えるんだけど、同床異夢みたいなところがないのかなと。
31:10
ま、当然ありますよね。うん。いわゆるイスラエル建国に至った19世紀末から20世紀初頭のユダヤ人のシオニズムって、どちらかというと世俗的なもので、そんな宗教色が強くないわけですよね。
31:28
バルフォア宣言以降、ドイツによって迫害されていく中で、多くの人たちが逃れたりとか、戦後も大英帝国の統治から国連の統治に変わって最終的に1948年に建国され、そこに至るまでのユダヤ人の働きってのは非常に世俗的で、そんな宗教色がないわけですよ。
31:46
で、その時は福音派もアメリカの中ではいたものの、そんなに政治的に力を持ってないし、むしろちょっと政治から距離を置いてたぐらい。ただ、旧約聖書で予言されたユダヤ人たちがイスラエル、パレスチナの地に再び集められて国を作るっていう予言を信じてたもんだから、
32:07
例えば1917年のバルフォア宣言とか1948年の建国時に、それをもう大喜びして受け止める。つまり予言が成就したと。「我々が生きてる間に予言が成就したんだ。これはどういうことだろうか」みたいな形で、すごく遠くから、実際の世界史の現場よりも遠く離れたアメリカで見て喜んでた人たちは当然いるわけですよ。でもそれがそこまで政治的な影響力を及ぼしてたわけではなく、一部がトルーマンにちょっと関連してたりするっていうのはありますけど、
32:43
1948年以降、主にアメリカのキリスト教でイスラエル支援に向かったのは主流派って言われる人たちなんですよ。
32:52
主流派っていうのは福音派に比べて、聖書をそれほど逐語的に取らないし、宗教間対話も重要視するし、より寛容で多様性を歓迎するような流れで、今でも10%以上はいるって言われていて、中でもラインホルド・ニーバーっていう有名な神学者(オバマとかが大好きだった)なんかが中心となって、1948年以降イスラエル支援に向かうんですね。
33:16
で、その理由は特に終末論的あるいは予言の成就とか全然なくて、むしろキリスト教の歴史を紐解くと、イエス以降のキリスト教の歴史っていうのは基本的にユダヤ人たちを悪者にしてきたと、イエスを殺害させた張本人だということで迫害してきたわけですよね。その結果、ベニスにゲットーがあったり、ポグロムが起きたり、最終形態としてホロコーストが起きたというのが彼らの理解で、キリスト教はユダヤ人に対して一旦責任があるということで、人道的理由からユダヤ人を守るための国は認めて支援していこうということで、1948年以降支援するんですね。
34:09
ただ、1967年の第3次中東戦争(6日戦争)でイスラエル軍が大勝利して、東エルサレム、ガザ、ヨルダン川西岸、ゴラン高原といった土地を占領し、それ以降不法にそれを占領し続け、入植者をどんどん送り込んでて、特に西岸なんかそうですよね。それは国際法違反だし、国連も常に批判してるけど、それをやめない。
34:31
で、パレスチナ人がそこで抑圧され、イスラエル国防軍によって抑圧されるような状況を作り出した。それに対して主流派は「いや、これはおかしい」と。人道的視点から見るともはや擁護しなければいけないのはユダヤ人よりもパレスチナ人じゃないかということで、パレスチナ人支援に向かっていくんですよね。
34:55
ただそうなると、イスラエル国家もちょっと困るわけですよ。これまでアメリカの支援を主流派を通して取り付けていたのに、そういう人たちがだんだん離れてしまう。それはちょっと問題だ。で、そういう時に、だんだん力を持ち始めた福音派にイスラエルも目をつけ、福音派もイスラエル・パレスチナ問題にすごい関心を持ってたし、そこに行きたいと思っていたので、そこで交流が生まれるんですよね。
35:23
で、そうすると70年代後半から80年代にかけて福音派がすごく政治化していく中で、例えば代表的な人物としてジェリー・ファルウェルなんかは、リクード党の当時の首相になったベギンとすごい親密な関係を結んで、蜜月関係が生まれていくんです。
ジェリー・ファルエルは、アメリカ合衆国のキリスト教福音派のファンダメンタリスト、南部バプテスト連盟所属の牧師、テレビ伝道師。生前はアメリカ合衆国南部の福音派のキリスト教原理主義勢力をとりまとめて共和党を支援するなど政治的に強い影響力を持っており、大統領候補者ですら無視することは困難だった。
35:47
で、福音派って、当時の福音派の大部分は南部出身で、南部の白人保守的なプロテスタントは大部分が反ユダヤ主義者だったんですよ。すごくユダヤ人を蔑視していて、黒人だけじゃなくてユダヤ人も蔑視してたんだけども、
36:05
伝統的なキリスト教的反ユダヤ主義というか、「お前らはイエスを殺したんだろう」みたいな感じで人を蔑視してたんだけども、60年代後半から70年代にかけてだんだん福音派がイスラエルとつながりを深めていって、そういういわゆる予言の成就としてのシオニズムをキリスト教の牧師たちが説教台から語るようになると、もうその20年の間にその反ユダヤ主義っていうのが南部でだんだんなくなっていくんですよね。
36:28
で、それにファルウェル自身もこの20年で大きく変わったみたいなことを言ってるし、それ以降今のような形でシオニズムがすごく強くなっていくんですね。
36:43
うん。なるほど。あの、シオニズムの強さ、だから逆に言うとそこはそれぞれの物語は違うんだけど、アメリカのシオニズムが強まってちょっと考え方が違うんだけどという風になることは、ほとんど生じないんですね。
37:00
そうで、ユダヤ人もつまりトランザクションとしてはシオニストによる支援がないと困るわけですよね。本当にどう思ってるかは別として、表面上は仲良くしておかないと、正規の援助のお金の大部分がアメリカから送られてきたりするわけですよ。だから支援も欲しいし、そういうことで手を結ぶし、福音派も福音派で本来はユダヤ人たちに回心してほしいわけですよ。信じてほしい。ユダヤ人は信じてないから。
37:26
だけどあまりそれを前面に出すと、イスラエルは最初は新教の布教活動を認めていなかったから、そういう意味では回心活動は良くない。うん。
37:43
もちろん宗教が存在してもいいんだけど、布教活動はすごい禁止だったわけですよ。だからそこはちょっとひっそりやりながら、「味方ですよ」ということで。だから本来はね、おっしゃる通り同床異夢で、目指す方向は違うんだけども、ユダヤ人にとってはイエスは予言者の1人に過ぎないし、救い主でも神でもないわけなので、そこでは当然違うし、
38:09
でも福音派にとってはいやいや、イエスこそが救いなんだけど、でもパレスチナの地にとって重要なのは、そこは同意できるわけですよ。福音派にとってはそこにイエスが帰ってきて、14万4000人のユダヤ人が救われるっていう予言があるので、それを待ってるわけ。うん。
38:28
でもユダヤ人からするといやいやそれ別にどうでもいいけどね。うん。だからそこはお互い踏み込まないっていうことなんですよね。ビリー・グラハムなんかも1970年代とかにそういうような同意を当時のユダヤ人、イスラエルのユダヤ人と結んだりしたっていう記録も残ってるし、あえてそれは布教はしないよ。でも協力関係を築きましょうよっていう関係が福音派の中では出てきたっていうことですね。
チャプター 13: 中間選挙はどうなる?
8:52
今までのお話伺って確かに各宗派とか、イスラエルとアメリカとかそれぞれ差とかグラデーション、考え方の違いはあるんだけども、これだけの戦争を起こしてなお
9:03
あまりその辺の構図自体が軋轢を生じたり、踏み込みすぎて喧嘩したりっていうことが起きてないと、すると秋の中間選挙っていうのも思ったよりも共和党に不利と普通であれば言われるわけですけど、そんな感じでもないんでしょうか。
39:11
ま、不利なのは無党派・浮動票がどんどん離れてるっていうことですね。全体で見るとやっぱり今の現政権の支持率っていうのは30%台になってるので、それは確かに浮動票が離れていて、民主党は当然最初から全然支持はしていないので、当然そこそこにリーチアウトするのは無理だけども、ただ中間選挙ってやっぱり投票率が低いんですよね。
39:47
で、そうするともう熱心な党員たちは行く、あるいは指示者たちは行くけど、あんまり浮動票が関係なかったりするので、だから徹底してその岩盤支持を固めるっていうか、そういう意味では福音派にアピールすることは当然利にかなっているし、そこで保守的なユダヤ人たちにリーチアウトするってのは当然利にはかなってる。だから負けるとは思いますけど大敗しない。
40:12
大敗しない。ま、大敗してしまうとね、例えば上院でも2/3とか取られちゃうと完全に行き詰まるんで、まあまあ、そこまでいかないぐらいの、ぷりっていうようなところを見てるのかもしれないですね。
40:26
我々から見るとこれだけの戦争で、言ってることもブレブレで彼の支持を下げる要因に大いになって選挙にもう影響するんじゃないか、その辺が違うという辺りもちょっと踏まえつつ、今後の動向も見ていった方がいいかもしれません。
40:43
なんかもうMAGA派が分裂するとかね、言ってますけど、世論調査を見る限りはマガ派は結構まだまだトランプ支援だし、共和党支持者当然まだまだ、で、福音派もなんかちょっと下がってるとは言われてるけども、それでも7割近くはまだトランプさんを支援してるので、そう考えるとね、なんか日本から見るといやもう終わりだろうとか思うけど、全然そんなことは岩盤支持層はまだそこまで揺れてないと思うんですよ。
41:12
え、ま、ただその今のマガ派のインフルエンサーの影響がどこまで浸透していくかとかっていうのは、今後ちょっと分からないと思いますけど。うん。
41:21
ちょっと今の加藤さんの色々なお話が出てきたものをですね、少しテイクノートしながら、今後のニュースをより注意深く冷静に見ていきたいなというふうに思います。あの、今日は加藤先生どうもありがとうございました。




































































