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阪本研究所 SK laboratory

『ウクライナ問題の基礎知識』 YouTube【そうきチャンネル】 渡辺惣樹(わたなべ そうき、1954年 - )は、日米近現代史研究家。ソーワトレーディング代表。日本開国から太平洋戦争開戦までの日米関係史を研究し、著作を発表している。

ウクライナ問題についてはTVニュースやネット記事など様々なことが書かれています。

すべての報道や書籍が偏見に満ちているとは思えません、しかしながら、
歴史を深く勉強し、自分の頭で両方の立場から考えてみることも大切ではないでしょうか?

 

ヨーロッパ事情は複雑です。そこへ米国が関わるとその複雑さに輪がかかります。
                                (阪本研究所)

 

 

 

ウクライナ問題の基礎知識』 YouTube【そうきチャンネル】 渡辺惣樹(わたなべ そうき)

 


【そうきチャンネル】『ウクライナ問題の基礎知識 その1』・クリミヤの民族構成 ・天然ガスを取り巻くヨーロッパ諸国の錯綜する思惑 日米近現代史研究家 渡辺 惣樹(わたなべ そうき)

 

 

*以下は動画のスクリプトです👇

 

2023ウクライナ問題の基礎知識 その1

 

ウクライナ戦争の本質を理解する切り口はいくつかあります。

 

 

 

NATOの止むことなき東進とそれに反発するロシア・プーチン大統領との確執がその一つであることはこれまでの動画で繰り返しお話ししたところです。

 

 

 

ウクライナ戦争を理解する肝は他にも二つあります。一つは、クリミアの民族構成です。

 

ロシア人が6割を越えるこの地域が、歴史的な経緯の中で、不自然にもウクライナに帰属している事実です。

 

もう一つの切り口が西ヨーロッパ諸国に安価で安定したロシア産天然ガスを供給してきたノードストリーム1および、これから供給することが決まっていたノードストリーム2を巡るヨーロッパ諸国の錯綜する思惑です。

 

 

 

エネルギーとりわけ天然ガスを取り巻く諸事情が、ウクライナ戦争を読み解く重要な鍵の一つであることは、ウクライナ戦争勃発後すぐに行われた未来ネットにおける討論でも申し上げました。

 


※調整版 3/3 16:30〜『いわんかな#57』ゲスト:渡辺惣樹(日本近現代史研究家)露・ウクライナ侵攻報道に見る日本を覆うリベラル思想(高山正之・馬渕睦夫・塩見和子・宮崎正弘・福島香織)

 

 

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本チャンネルの視聴者の方からウクライナ戦争についての基礎的な解説を望む声が届きました。

 

 

今日の動画では、手短に、この戦争を正確に理解するための基礎情報を皆さんにお伝えしたいと思います。

 

 

本格的な分析を望む方は、私が翻訳した草思社文庫「コールダー・ウォー」を手に取ってください。
ロシアに豊富な天然資源をベースにしたプーチン大統領の世界戦略が手に取るように分かります。

 

 

その中でのウクライナの立ち位置も正確に理解できます。

 

「コールダー・ウォー」マリン・カツサ著(渡辺惣樹翻訳)
草思社文庫

 

 

とりわけ第5章の「ウクライナ問題」は必読です。

 

 

私のウクライナ戦争についての発言は「コールダー・ウォー」の著者マリン・カツサの鋭い観察と分析を応用したものです。

 

 

 

私のこれまでの発言がぶれずにすんでいるのは、私自身がこの本を出版社に紹介し、翻訳を担当したからでしょう。

 

「コールダー・ウォー」は2015年の出版です。

 

 

いまから思えば、マリン・カツサは、すでに紛争の勃発した7年前にウクライナ戦争を予期していたと言えます。
ロシアとウクライナの長い歴史を20世紀に限ってお話しします。1917年のロシア革命後のソビエトウクライナソビエト社会主義共和国を建国したのは1922年のことです。
スターリンは、ロシア全土で農業の集産化を進めました。土地を集団所有として共同経営化したのです。
それがソルホーズやコルホーズと呼ばれる集団経営組織でした。

 

 

労働インセンティブに欠けるこのシステムに農民は働き甲斐を失い農業生産は停滞します。
さらには、工業機械など西側の技術導入に外貨のないソビエトは、農産物の輸出代金をあてにしました。

 

 

大量の穀物が農村から接収され人工的飢饉が広がりました。
この飢饉はホロモドールと呼ばれ、およそ250万がウクライナで餓死しました。
もっと多かったのではないかとの研究もあります。
ウクライナは穀倉地帯だけに被害が甚大でした。

 

 

 

 

 

第二次世界大戦期には、ウクライナナチスドイツに占領され、1944年に再びソビエト支配下に入りました。

 

 

 

 

1954年、クリミアはウクライナソビエト共和国に編入されました。

 

 

 

当時の、ソビエト中央委員会第一書記ニキータ・フルシチョフが、ロシアによるウクライナ統合300周年を記念すると称して、クリミアをウクライナに「プレゼント」したのです。

 

 

 

 

当時はソビエトが全盛の時代でしたから、フルシチョフにとっては、伊豆半島を神奈川県にするか静岡県にするか程度のことでした。
フルシチョフウクライナに近い村で生まれたこともあり、スターリンの起こしたホロモドールに罪悪感を感じていました。

 

 

ニキータ・フルシチョフ第一書記(任期:1953~64年)

 

 

 

フルシチョフのこの贖罪感によって、ロシア人が6割を占めるクリミアがウクライナに帰属することになったのです。

 

 

 

クリミアの民族構成の推移

 

 

 

ソビエトが強固な時代にはロシア人が多数派であってもクリミアの民族問題は表面化しませんでした。

 

 

しかし、1991年、ソビエト連邦が崩壊し、ウクライナが独立を果たします。
これによって、ソビエト時代にはなんの不都合もなかった、クリミアの自然でないウクライナ帰属が紛争の種になるのです。

 

この続きは次回の動画でお話します。

 

 

 

2023ウクライナ問題の基礎知識 その2

 

 

 


【そうきチャンネル】『ウクライナ問題の基礎知識 その2』・ロシアは天然資源の宝庫 ・米英が最も嫌うのがドイツとロシアの接近 日米近現代史研究家 渡辺 惣樹(わたなべ そうき)

 

 

前回の動画で、ウクライナ問題を考えるにあたって、肝となる二つの点を申し上げました。

 

 

 

一つはウクライナの民族構成であり、もう一つが西ヨーロッパ諸国に安価で安定したロシア産天然ガスを供給するノードストリーム1および2をめぐるヨーロッパ諸国の錯綜する思惑でした。

 

ロシアは天然資源の宝庫です。とりわけ天然ガスの埋蔵量は38兆立方メートルと見積もられています。

 

 

 

これは25兆立法メートルのカタール、32兆立方メートルのイランを上回り世界一の数字です。

 

推定埋蔵量は年々変化します。

 

それを示すグラフを表示しました。ロシアの埋蔵量がとびぬけて高いことが確認できると 思います。

 

 

 

 

ノードストリームに代表される海底パイプラインが建設される前は、言うまでもなく陸地に埋設されたパイプラインが使用されていました。

 

 

 

 

陸上パイプラインを通じて、ロシアからの天然ガスEU全体の使用量の25%を満たしていました。

 

ロシアは、ウクライナにパイプライン使用料を払う代わりに、ただ同然の価格で天然ガスを供給していました。

 

それだけにウクライナは、ガスの節約に関心がなく、ガスエネルギー効率が極めて悪い国でした。

 

2005年に両国の関係が悪化し、ロシアが料金を上げるとウクライナは支払いに滞るようになります。

 

それが理由でウクライナ国営ガス会社によるパイプラインからの盗ガスも目立ち始めます。

 

ロシアは支払いを求めてストックホルムの国際仲裁裁判所に訴えています。

 

裁判所は2009年におけるウクライナ国営ナフトガスによる盗ガスが、120億立方メートルであったと認定しています。

 

ウクライナが返済できる額ではありませんでした。

 

ロシアにとって、陸に埋設されたパイプラインは頭痛の種になりました。

 

ロシアが、ウクライナの盗ガスや不払いの問題を恒久的に解決するために構想したのが海底パイプラインの敷設でした。

 

ロシアがウクライナの反対を押し切って黒海海底に敷設した海底パイプラインがサウスストリームです。

 

 

 

サウスストリームは、ロシアから黒海を通りブルガリアに入りセルビアハンガリーオーストリアなどに通じる予定でした。

 

 

によるヨーロッパ諸国による制裁で建設は頓挫しました。

 

しかし、現在は、黒海からトルコに通じるタークストリームが稼働しています。

 

 

 

 

 

バルト海の海底を利用しロシアからドイツに供給するパイプラインの建設プロジェクトは、2005年9月8日にプーチン大統領と当時のドイツ首相ゲアハルト・シュレーダー首相との間で調印されています。

 

シュレーダー首相はこの調印の10日後に選挙を控えていながらも、ノードストリームプロジェクトを決めました。

 

選挙敗退の可能性もあっただけにどうしても調印しておきたかったのです。

 

この調印の時期が戦後のドイツとロシアの友好が最も輝いた時だったのかもしれません。

 

そのことは、プーチン大統領シュレーダー首相のにこやかな笑い顔が象徴しています。

 

 

 

 

アメリカそしてイギリスがもっとも嫌うのが独ロ接近です。

 

大陸の二つの強国が接近するたびにそれを離反させてきました。

 

ノードストリームが完成すれば、ドイツは安価なエネルギー源を長期にわたってロシアから確保できることになります。

 

ドイツが再びヨーロッパの雄としての姿を現すことを今回も英米二カ国は嫌いました。

 

他にも、ノードストリーム計画で独ロが接近することを嫌う国々がありました。

 

陸上ガスパイプランの通過使用料を期待できなくなったウクライナポーランドあるいはバルト三国などでした。

 

こうした国々を不快にしたノードストリーム1が完成したのは2011年のことです。

 

 

 

パイプラインの総延長は1224キロメートルで、ドイツの港町グライフスヴァルトサンクトペテルブルクに近いロシアの港ヴィボルグを結びました。

 

これによってドイツはその天然ガス需要の4割を確保できることになりました。

 

 

ノードストリームの完成を喜ぶヨーロッパ首脳

 

英米ウクライナポーランドなどの不興を買いながらも、2015年6月にはアンジェラ・メルケル首相が、ロシアからの供給量を倍増させるノードストリーム2の敷設プロジェクトを調印しました。

 

 

 

ノードストリーム2は2021年9月に完成しました。

 

 

 

 

しかし、この二つ目の海底パイプラインは、一度も使われることなく、ノードストリーム1とともに、昨年9月末に破壊されたのです。

 

この破壊を仕掛けたのはアメリカであることを暴露したのは、調査ジャーナリスト・シーモア・ハーシュだったことはお話ししました。

 

 

 

米英両国は独ロの経済紐帯を破壊したのです。ポーランドウクライナそしてバルト三国も喜びました。

 

パイプライン通過料を期待できなくなった国々はその憂さを、パイプライン破壊のニュースで晴らしたのです。

 

今回のウクライナ戦争は、独ロの連帯を破壊する最高の口実になりました。

 

ヨーロッパ事情は複雑です。そこにアメリカが関与するとその複雑さに輪がかかります。

 

 

 

 

二度の世界大戦はヨーロッパから始まりました。第三次世界大戦を再びヨーロッパが起こすようなことを許してはなりません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

動画制作:そうきチャンネル

 

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